岸田政権が日米一体で「敵基地攻撃」可能にする「安保3文書」閣議決定
この国のあり方を対米隷従「戦争国家」へ覆す暴挙
沖縄・南西諸島を戦場にするミサイル攻撃前線基地化を許さない!

 岸田政権は12月16日、国家安全保障戦略などの「安保関連3文書」改定の閣議決定を強行しました。改定文書には、戦後の歴代政権が違憲と禁じてきた相手国領内への「敵基地攻撃能力」の保有を初めて明記し、日本が攻撃されていないもとでも、米国への攻撃が着手されたと米国が判断すれば安保法制による「存立危機事態」での集団的自衛権行使で敵基地攻撃が可能となり、「日米が協力して対処していく」とされています。
 敵基地攻撃能力の保有・行使を核心とする安保3文書改訂による大軍拡は、「日本を守る」ためでなく、アメリカの中国との戦争に日本が参戦し、自衛隊が米軍と一体となってその最前線を担い、沖縄・南西諸島のミサイル攻撃最前線基地化を軸に、この列島全体を戦場にするものです。
 この意味で閣議決定は、戦後の「専守防衛」をかなぐり捨て安全保障政策の根幹を変え、戦後日本の国のあり方を根本から対米隷従の「戦争国家」に変える重大な決定です。このような日本の針路を大転換させる方針を、国民への十分な説明、国会議論もなく一つの内閣の判断で決めることは、民主主義を根底から破壊する暴挙です。
 今、岸田首相は、東アジアと日本の平和を破壊する危険な閣議決定を、新年1月の訪米・日米首脳会談の手土産にしようとしています。問われているのは、戦争と軍拡のための「戦略」でなく、平和のための「構想」で、不測の事態を防ぐ平和外交への努力です。
 岸田政権の戦争への暴走は、圧倒的な反対世論と大運動で阻止することができます。
 闘いの狼煙は「沖縄・南西諸島を再び戦場するな!」と琉球の島々から挙がっています。
 全国各地からも抗議の声と行動が始まっています。

 わたしたちは強い憤りをもって閣議決定を糾弾し、その撤回を求めます。
岸田政権の「戦争国家」への暴走を阻止する大きな運動を起こそう!

2022年12月20日 沖縄意見広告運動事務局

 
「解説」岸田政権の「安保3文書」改定の危険な内容について
(事務局作成)

1,アメリカ政府の国家安全保障戦略と一対の「安保3文書」改定
安保3文書は、最上位の戦略文書である「国家安全保障戦略」、その戦略を達成するための手段・方法をしめす「国家防衛戦略」、軍事費や装備品数量を示す「防衛力整備計画」で構成され、その名称も米国の戦略文書と同じ名称に変えられている。バイデン米政権は2020年10月、新たな国家安全保障戦略を打ち出している。その核心は「唯一の競争相手」とする中国が今世紀半ばには経済的軍事的にアメリカを追い抜き、アメリカ単独では中国に勝てない、このアメリカ最大の危機である通常戦力の弱体化を、日本などの同盟国の力をもって「統合抑止力」とするものである。この米政権の国家戦略に合わせ3文書改訂は決定されている。改定の狙いが日米の戦略的一体化であることが透けて見える。

2,安保3文書改訂の危険な内容
第1に、「対中戦争」遂行において米単独では中国に勝てない米国よりの日本への「応分の負担」の強い要求に答えて、自衛隊の「敵基地攻撃」を可能とし「日米が協力して対処していく」と踏み切ったことである。
第2は、「敵基地攻撃」実行のために、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホーク、「スタンド・オフ・ミサイル」導入計画とその独自部隊の新設。さらに「統合防空ミサイル防衛(iAⅯⅮ)」導入。この陸、海、空、宇宙のあらゆる装備を統合し敵のミサイルを迎撃するiAⅯⅮは米軍が推進するシステムで、中国などのミサイル脅威を念頭に地球規模での「防空」網である。この導入はアメリカの劣勢を同盟国の力で補完する「統合抑止」戦略の実態化で、これにより自衛隊の敵基地攻撃が米軍の指揮・統制下で行われると共に、日本の「専守防衛」で日米が役割分担してきたに自衛隊が「盾」、米軍が「矛」の関係の大転換となる。
重要なことは、沖縄・南西諸島が「対中」ミサイル攻撃前線基地化が強化されること、さらにその強化のために沖縄・那覇市に司令部を置く陸上自衛隊の第15旅団の師団への改編を軸に、米軍の南西シフト態勢と一体の沖縄・南西諸島に駐屯する自衛隊部隊の増強が計画された。この一環として辺野古新基地建設の強行も明記された。
第3は、防衛予算を国内総生産(GⅮP)の2%と明記し、具体的には27年度までの5年間にミサイルや戦闘機など防衛費を現行計画の1.5倍となる総額43兆円と明記されたこと。
第4は、沖縄・南西諸島のミサイル攻撃基地化と結んで本土全体でその最前線を担うために、一般の港や空港・公共施設を戦争に使う整備やシェルター建設や避難訓練、輸送のための民間船舶・航空機の動員が盛り込まれ、大多数の国民を犠牲にする戦争への国民総動員体制準備も明記されている。

3,防衛費の財源問題--その問題点
米国の戦争の最前線を担うため大増税と建設国債で
再び戦前と同じ破滅の道へ

重要なことは大軍拡の財源である。岸田政権は閣議決定と同時に、2023年度の税正改正大綱を決定し、5年間の防衛費総額43兆円のうち新たに必要となる増額分を捻出するため、27年度までに法人税、所得税、たばこ税の増税で1兆円強の財源確保を決定した。重要な問題が2つある。
第1は、所得税の税率1%を上乗せする新税を創設して軍事費の財源とし、また東日本大震災の復興費のための復興特別所得税の税率を現行2.1%から1%下げて同税の税収半分を軍事費に回すという、露骨な復興切り捨てと増税路線である。
東日本大震災による避難者は今なお3万人といわれ復興は進行中で、その予算を軍事費に流用することや、コロナ禍やウクライナ情勢で物価高騰に苦しむ全国民への所得税増税は、その命や生活破壊に通じる。
第2は、自衛隊の施設整備の財源に5年間で1.6兆円の建設国債を充てる方針である。これまで政府は、戦前に戦時国債を発行して軍事費を膨張させた反省から、戦後は建設国債を防衛費に充てる政策は禁じてきた。岸田政権はこの禁じ手をも破る方針へ舵を切った。戦前・戦中、戦費調達のために巨額な国債を発行し、日銀が引き受け、そのつけは札がただの紙切れになるような極端なインフレで人々の生活を破壊・犠牲にしたその破滅の道への扉を開いたのである。
問題は、防衛費の財源が増税か国債かでなく、戦争国家への軍事拡大路線そのものが間違っているのであって、アメリカ隷従の軍拡路線を断念するべきである。


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